(奥津お兄さま………)





思わず、身舍の中に足を踏み入れ、身を隠す。




息をひそめて窺っていると、話の内容が聞き取れるほどに近づいた。





「………それでは、五の皇子さまがお崩れになったというのは、まことに確かなことなのですね」





控えめに問いかけるは、奥津宮と親しくしている六位の蔵人の一人のものだった。




次に、「ああ、そうだ」と答える奥津宮の声。





「お祖父さまの腹心の部下である黒鶴たちの一行が、白縫山で冷たくなっている兄上を見つけたのだそうだ」




「雪山で遭難なされたのですね」




「まあ、そういうことだな。遺髪も持ち帰っているから、確かだよ」




「はかないものですなあ、帝の御子ともあらせられた御方が、一人きりで凍死なされたとは」