最期の瞬間。




産み落とした赤子の姿が、泡雪の瞼裏に浮かんだ。




雪の中で震えて泣いていた、愛しい子。






(あの子と、沙霧と、三人で暮らせたら、どんなにか幸せだったろう………)






叶わなかった儚い夢が、切なかった。






(ーーー幸せになってくれ。


私たちの分まで………。


私たちよりもずっと………。



たくさんの優しい人に囲まれて、幸せになってほしい。



ーーー神よ。


私と沙霧に与えた惨い運命の代わりに、あの子には幸福な運命を与えてくれ。



あの子が、愛すべき者と出会って、愛し合って、そして、年老いるまで、命尽きる瞬間まで、共にいられますように………)






清らかな天界から降り注ぐ雪が、優しく二人の身体を包んでいく。




いつしか、二人の姿は白に覆い隠された。