思い通りにならない腕を必死に動かして、沙霧はぎこちなく泡雪の髪を撫でた。




怒りと不安と恐怖で真紅に燃えていた髪が、ゆっくりと白に戻り始めた。




それと同時に、泡雪の心は凪いでいき、穏やかな愛しさが溢れてきた。





「沙霧、お前に出会えてよかった。

お前と出会って、お前と共に暮らして、私は満ち足りた気持ちを知った………」





沙霧はやはりぼんやりとしたまま、それでもゆったりと微笑んで、小さく頷いた。





「それは……わたしも、同じだよ。

君と出会って、わたしは、守るべき者を、得て………」





思いを伝えるために、喉を引き絞るようにして、切れ切れに声を絞り出す。





「………愛することを、知った。

愛され、守られることしか、知らなかったわたしが………大事な人を、愛し、守ることを、知った」





沙霧は泡雪の唇を震える指でなぞり、そっと引き寄せて、唇を合わせた。





「ーーー愛しているよ、泡雪。

いままでも、これからも、ずっと、永遠に………。


愛している。

一生、共にいよう………」