(定めは、変えられない………。


でも、せめて………もう少しだけ………。

あと、もう少しでいい………ほんの一瞬でも、いいから………)





泡雪は目を閉じて、すでに消えかけている自らの命の光を、指先に集めた。




沙霧の頬に指先を当て、命を吹き込む。



自分の身体から力がみるみる失われていくのを感じたが、そんなことはどうでもよかった。




沙霧が目を覚ましてさえくれればーーー





自分が気を失う寸前、ひとかけらの力だけを残して、泡雪は目を閉じた。




そして、愛しさを込めてそっと口づける。




この気持ちが、伝わるだろうか?



全てを失ってもいいと、微塵の迷いもなく思える、この愛しさが。





「…………あわ、ゆき?」





耳慣れた柔らかい声音に、泡雪は瞼をあげた。



優しい瞳が、泡雪を映していた。





「…………沙霧」





小さく呟くと、沙霧は微かに笑った。





「泡雪………どうした?

なぜ、泣いている?」





沙霧は震える指で泡雪の頬を撫でる。




その手を両手で包み込み、泡雪は頬を寄せた。