雪は、ただただ静かに降り積もる。




欲にまみれた人の世の全ての穢れを覆い隠そうとするように、暗い空からはらはらと舞い落ちてくる白い雪を、泡雪は虚ろな瞳で眺めている。




いつの間にか風は収まり、綿のような柔らかい雪が降っていた。




冷たい雪のひとひらが頬に触れたとき、泡雪は我に返った。





「………さ、ぎ……り………」





もはや自分のものとは感じられなくなった重い身体を引きずり、雪に痕を残しながら、沙霧のもとへと這っていく。





「………沙霧、沙霧………」





動かない沙霧の身体は、雪に埋れはじめていた。




泡雪は顔を歪め、沙霧にしがみつく。





「…………どうして……沙霧………」





呻きながら頬を寄せる。



そのとき、沙霧の口許から、微かな吐息が洩れるのを感じた。




まだ、命の灯火は消えきってはいないのだ。