鋭い刃に切り裂かれても全く怯むことなく、泡雪は男たちに掴みかかろうとした。



しかし、もはや力を失ってしまった泡雪が、多勢の彼らに敵うはずもなく。




全身を斬られ、立つことすら儘ならなくなってしまった。




ひときわ深く斬られた腿の傷のせいで、泡雪は一歩も動けなくなり、力なく地に落ちた。




全身を血に濡らして、真紅の髪を雪の上に乱し、泡雪は呆然と倒れる。




それから、ゆっくりと瞼を閉じた。




泡雪の首がかくりと横を向いたのを見て、男の一人が、




「…………死んだ、か?」




と呟いた。



離れたところで成り行きを見ていた黒鶴が、泡雪の傍らに膝をつき、じっと見つめる。




「………おそらく、もう事切れるだろう」




これだけの血を失って、命を繋ぐはずはなかった。




黒鶴は立ち上がり、今度は沙霧のもとへと足を向ける。




土気色になった顔は、どう見ても生きてはいなかった。