あまりの息苦しさに、口の中の血を吐き出そうと沙霧は咳き込んだが、胸の奥から次々と溢れ出してきて、噎せるばかりだ。





「沙霧、沙霧……っ」





泡雪は掠れた声で何度も呼んだ。



しかし、沙霧は何も答えられない。




空気を求めて大きく口を開いたが、息を吸い込もうとするたびに血が溢れた。





「………っ、あ……っ、ゆき………」





沙霧はもがきながら、泡雪の身体を強く押した。





「……に、げ………」





泡雪はふるふると首を振る。



沙霧は懇願するように泡雪を見つめたが、泡雪は唇を硬く結び、沙霧をきつく抱きしめた。





「………すぐに治してやる。

だから、だから………」





泡雪の身体から、あたたかなものが流れ込んでくるのを沙霧は感じた。




しかし、それは泡雪の命そのものだと分かった。





(………自らの命を削って、わたしを癒そうとしている………)





沙霧は渾身の力で泡雪を突き飛ばした。