男たちは黒鶴の制止を無視して、矢を放った。




無数の矢が、沙霧に降り注ぐ。




泡雪は目を剥き、なんとか沙霧の腕から逃れようとした。



しかし、身体に力が入らない。





「………沙霧っ!!」





泡雪の叫びと同時に、沙霧の背に矢が突き立った。



沙霧の腕の中の泡雪にも伝わってくるほどの衝撃があった。




沙霧は呻いて、苦痛に顔を歪める。




泡雪は沙霧に腕を回した。



ずしりと沙霧の身体が重くなる。



そのまま、泡雪を抱きしめたまま、沙霧は力尽きたように倒れた。





泡雪の顔から血の気が引いた。




沙霧は必死で顔を上げ、泡雪を見つめる。




「………逃げ、ろ、泡雪………。

君だけでも、助かっ………」




言い切らないうちに、沙霧の口から、真っ赤な血がごぽりと溢れ出した。