ざっ、と皮膚を切り裂く音がした。



その音で我に返った泡雪は、目を見開く。



どこまでも続く雪の白の中に飛び散る、鮮やかな赤。




「ーーー沙霧っ!」




泡雪の悲痛な声が響いた。



沙霧は痛みに顔を歪めながらも、ちらりと振り向いた。




「………大丈夫だよ、泡雪。

少し腕をかすっただけだ」




沙霧は右手で左の腕を押さえている。



その指の隙間から、血が溢れ出していた。




「………若宮さま」




沙霧を傷つけてしまったことに、黒鶴は思わず動きを止めた。



力なく弓を下ろしたとき、黒鶴の背後で男たちが身を起こし始めた。




苦しげに唸りながら矢をつがえる。




それに気がついて、沙霧は泡雪を抱きすくめた。



黒鶴は「やめろ!」と制止の声を上げる。




「射つな! 若宮さまに当たるぞ!」



「………しかし、あの女は危険です!」



「妖の力を持っていますぞ!」



「このままでは我らのほうが………」



「やめろ!」



「若宮さまは、どうせお命を奪われる定めではございませんか!」