深い雪の中を駆ける泡雪は、紅の髪を風に踊らせながら、自分の腹に手を当てていた。



まるで、その人ならざる力を全て注ぎ込むかのように。




そのうち、泡雪の腹がふっくらとしてきた。



しばらくすると、泡雪は足を止める。




そして、羽織っていた蓑を雪の上に敷き、その上に真っ白な衣を脱ぎ捨てた。




肌着一枚の姿で、泡雪はきつく目を閉じ、小さく唸る。




次の瞬間、泡雪は、小さな小さな赤子を産み落とした。




衣の裾で優しく拭ってやると、赤子は大きく息を吸い込み、激しく泣き出した。




泡雪はほっと息を吐き出し、純白の衣で赤子を丁寧に包む。



そして蓑の上に載せた。





「………すまない。

私はお前を置いて、お前の父親のもとへ行く。


許してくれ………。

沙霧のように、強く、優しい子になれよ」





泡雪は愛おしむように赤子を抱きしめたあと、燃えるような紅い髪を靡かせ、空に飛び上がった。