それでも、と泡雪は呟いた。





「ーーーそれでも、私は、行かなければ。

沙霧を失ったら、私はもう生きていけない………」





そう言った瞬間、泡雪の白銀の髪がじわじわと紅く染まりはじめた。



玉梓は驚いたように目を瞠る。




泡雪は微かに笑みを浮かべ、群雲に手を伸ばした。



その手に触れられた途端に、安らかに眠っていた群雲が目を覚ます。



そして、火がついたように泣きじゃくりはじめた。




玉梓は思わず群雲に気をとられる。



再び目を上げたときには、すでに泡雪の姿はそこにはなかった。





「泡雪………泡雪!」





外に飛び出したが、雪嵐に掻き消され、泡雪の姿は見えない。



これまでにないほど激しい泣き声をあげる群雲をぎゅっと抱きしめ、玉梓は目を閉じた。





「………どうか、どうか、神よ。

沙霧と泡雪に御加護を………」





小さな祈りは、雪煙に吸われて消えた。