「………だめよ、泡雪。

だって、あなたは………」




玉梓は視線を落とし、すっと手を伸ばして泡雪の下腹部に触れた。




「あなた、身ごもっているのでしょう?」




玉梓の言葉に、泡雪ははっと目を見開いた。




「ーーー知っていたのか」




泡雪は呆然としたように玉梓を見つめ返した。



玉梓が小さく笑い、群雲を抱き直す。





「見ていれば分かるわよ。

だって、女同士だもの」




「…………」




「沙霧の子なのでしょう?

無茶なことをして子が流れたりしたら、沙霧が悲しむわ」




「………沙霧は、知らないと思う」




「それでも、同じことよ。

たとえ後からでも、そのことを知ったら、絶対に悲しむわ。

あなたも、愛しい人の子を失ってしまったら、取り返しがつかないほど後悔するわよ」





泡雪は自分の腹にそっと手を当て、それから玉梓の腕の中の赤子をじっと見つめた。



自分の子でもない群雲を、優しい面持ちで慈しんでいた沙霧の姿が目に浮かぶ。