疾風と玉梓は顔を見合わせ、確かめるように互いの顔を窺ったあと、同時に首を横に振った。





「いえ、来ていないわ」




「二人ともずっとここにいたが、沙霧は来ていない」





泡雪は愕然とした。





「………そんな……はずは」





あまりの動揺ぶりに、疾風は泡雪の肩に手を載せ、「話を聞かせてくれ」と促した。




泡雪は必死に言葉を探して、事の次第を二人に伝えた。





疾風が考え込むように顎に手を当てる。




そして、不意に立ち上がった。





「とにかく、探そう。

俺は皆を呼んで探しに行くから、お前たちはここにいろ」





「いやだ、私も行く!」





泡雪は居ても立ってもいられず、疾風の後を追おうとした。



しかし、疾風は頑として受けつけない。





「沙霧が帰ってくるかもしれないから、ここで待っていろ。

沙霧が戻ったら、俺たちに知らせに来てくれ」





「…………」





まだ納得しない様子の泡雪の手を、玉梓がそっとつかんで座らせた。