「よしよし、いい子だなぁ、群雲」





疾風が目尻を下げて赤子をあやしていると、不意に泡雪が飛び込んできた。





「ーーー疾風! 沙霧は!?」





血相を変えて慌てふためく泡雪の様子に目を丸くして、疾風は「どうした?」と立ち上がる。





「沙霧は? 沙霧が来ただろう?」





赤子の世話に疲れて眠りこんでいた玉梓も、いつにない泡雪の大声に目を覚まし、寝床から起き上がった。





「泡雪……どうしたのよ、いったい」





玉梓は立ち上がり、落ち着かせるように泡雪の肩を撫でた。





「………沙霧、が」





呻くような呟きが、泡雪の震える唇から洩れた。





「沙霧が、戻って来ないんだ………」





そのまま、眉根をきつく寄せて玉梓にすがりつく。





「沙霧がここに来ただろう?

その後どこに行ったか分からないか?」