どんよりとした鈍色に沈む雪曇りの空を見上げながら、沙霧は一人、純白の雪原を横切っていた。




泡雪が教えてくれた辺りに近づいていくうち、探していた人影を見つけた。




しばし足を止めて遠目に様子を窺い、確信する。




沙霧は一つ息を吐いて、覚悟を決めたような面持ちで歩き出した。




ざく、ざく、と雪を踏む音に、ものものしく武装した男たちが振り向く。





「…………若宮さま!」





先頭にいた男が、驚いたような声を上げた。




沙霧は苦い笑みを浮かべ、「久しぶりだな、黒鶴」と呟く。





「ーーーお探し申し上げておりました」





深々と頭を垂れる黒鶴に小さく頷き、沙霧はゆっくりと語り出した。





「探されていることは分かっていた。

わたしは逃げも隠れもしないよ。


………わたしを見つけたからには、この山に用はないだろう。

一刻も早く、降りよう」