「………きっと、都から来た物好きな貴族の、狩りの一行か何かだろう。

危ないから、近づいてはいけないよ」





有無を言わさぬ調子で話を打ち切られ、泡雪は不満げに唇を尖らせた。




沙霧はくすりと笑い、口づけを落とす。




驚いて目を見開いた泡雪を微笑ましげに見つめ、沙霧はその髪に指を絡めた。





「………君を愛しているよ、泡雪」





沙霧の濡れたような優しい瞳に映る自分を見つめながら、泡雪はなぜか泣きたくなった。




こんなにも幸せなのに、暗い予感が胸を締めつけるのは、どうしてだろう。





「わたしは一応、疾風に報告に行ってくるよ。

泡雪、君は戻っていておくれ。

身体が冷えているよ」





それきり、一度も振り返らずに立ち去っていく沙霧の後ろ姿を、泡雪はいつまでも見つめていた。