翌朝、目を覚ました沙霧は、すぐに泡雪の姿を探した。



泡雪は、安らかな寝息を立てながらこちらに顔を向けて、小さく丸まって眠っている。




沙霧は愛しげに目を細め、泡雪を起こさないように気づかいながらも、何度もその美しい髪を指で梳いた。





「………泡雪」





想いを込めて、囁く。



こんなにも誰かを愛しいと感じたのは、初めてだった。



母親や父親、弟の朝日宮のことは、もちろん大事だと思っているが、泡雪に対する想いは、それらとは全くの別物だった。





(離れたくない。手離したくない。

この無垢な魂を守るためならば、わたしは何でもできる)





雪に跳ね返された朝の光が、静かに射し込んでいた。





ーーーそのとき。



沙霧はふいに、心臓をわしづかみにされたような気持ちに陥った。




目が眩むほどにまばゆい朝の光の中で、泡雪が滲んで、消えてしまいそうに見えたのだ。





唐突に、「泡雪」という言葉の意味が重く心にのしかかった。



泡雪とは、すぐに溶けて消えてしまう、儚いものの象徴。