「寒いから、とにかく戻ろう」





沙霧は泡雪の肩を抱き、洞穴に戻って寝床に泡雪を座らせた。



泡雪は青ざめた顔で沙霧をじっと見つめている。





「ーーー嫌な夢を、見たんだ」





ぽつりと、独り言のように、泡雪が囁いた。





「………お前が、ある日突然ーーーいなくなる夢だ。

私は、寂しくて悲しくて苦しくて、おかしくなりそうだった」





「………泡雪………」





「………どこにも行かないでくれ、沙霧。

お前が私に、誰かと共に過ごす温かさを、誰かがいなくなる寂しさを、教えたんじゃないか。

私を置いていくなんて、ひどすぎる。


ずっと私と共にいると、約束してくれ」






いつも口数の少ない泡雪が、必死に言葉を探している。




沙霧は胸がいっぱいになり、泡雪の頬に手を触れた。





「どこにも行かない。

約束する。

わたしは生涯、君と一緒にいるよ」





泡雪は、自分の頬をゆっくりと撫でる手に、そっと手を添えた。