夜半すぎ、泡雪はふいに目を覚ました。



無意識のうちに沙霧の姿を探して、気配がないことを悟ると、ざっと顔を青ざめさせて身を起こす。




「………沙霧?」




呟くような声は、闇に吸い込まれるように儚く消えた。




「沙霧!」




鋭く叫び、泡雪は洞穴から飛び出した。



吹雪は少し収まり、雪雲の向こうでぼんやり光っている月の明かりを受けて、降り積もった雪がほの白く輝いていた。




その中に沙霧の背中を見つけ、泡雪は泣きそうなくらいに安堵する。




「………沙霧」




囁くように呼ぶと、沙霧が振り向いた。




「泡雪。ごめん、起こしてしまったかな」




その優しく穏やかな微笑みが、なぜだか雪煙りに掻き消されてしまいそうに思えて、泡雪は気がついたら走り出していた。




「沙霧!」




ぶつかるように抱きつくと、沙霧は目を丸くして抱きとめた。




「………どうした、泡雪」




泡雪はぎゅっと目を瞑り、沙霧の背に回した腕に力をこめた。