びゅうびゅうと吹き付ける雪まじりの風に目を細め、泡雪は聴覚を研ぎ澄ませる。




純白の髪が風に舞い踊る。





泡雪の様子の変化に気づき、沙霧は「どうした?」と訊ねた。





しかし泡雪は何も答えず、厳しい目つきで白い森の奥を見据えている。





泡雪の全身が、感覚を研ぎ澄ませるように硬くなり、緊張感を漂わせていた。






「………泡雪?」






沙霧の声を聞きながら、泡雪は常人ならざる感覚をもって、森の奥深くから発せられる何らかの空気を探っていた。






(………なんだ?


なんとも言えない、不快で不穏な気配を感じる………)






しかし、距離があるためか、その正体を見極めることはできそうにもなかった。






(………こちらに近づいている、というわけではなさそうだ。


しばらく様子を見るか………)






無言のうちに結論を出し、泡雪は沙霧に向き直った。





どこか不安げな表情の沙霧に、泡雪はかすかに笑みを見せ、






「何でもない。帰ろう」






と告げた。