「いやいや、そんな滅相もない!」





と首を振る沙霧に、疾風は大らかな笑みを向ける。





「そんなことはない。

お前は俺にとって一番の友人だし、玉梓が身ごもっている間、本当によく気遣ってくれた。


生まれたこの子のことも可愛がってくれるに違いないし、ぜひとも沙霧に名を考えてほしいと、二人で話し合って決めたんだよ。

なぁ、引き受けてくれないか」





「ええ、そうよ、沙霧。お願い」






赤子の父母にそろって頼まれて、断れるはずもない。





沙霧はうぅんと眉根を寄せて赤子の顔を見つめた。




そして、思いついたように顔を上げる。






「群雲、というのはどうだろう?」






泡雪は首を傾げて沙霧を見た。






「ほら、この子の髪。

なんとも豊かで柔らかくて、ふわふわと漂う雲のようじゃないか」






沙霧の言葉に疾風と玉梓は顔を見合わせ、くすりと微笑んだ。






「良い名だ」





「ええ、そうね。

空をゆっくりと流れる雲のように、大らかに育ってくれるわ、きっと」