目尻を下げて赤子を見つめていた泡雪が、ふと思い出したように顔を上げ、寝床に身を横たえている玉梓を見た。




そして、懐から小さな麻袋を取り出す。






「これ、白髭から預かってきた。

体調を回復させる薬草の粉らしい。

白湯に混ぜて飲めと言っていた」






差し出された袋を疾風が受け取り、「ありがとう」と微笑んだ。





さっそく水を火にかけながら、疾風は思い出したように「そうだ、沙霧」と口を開いた。






「あのな、一つ頼みがあるんだが」





「うん? わたしに出来ることならば、なんでも」






疾風は頷き、玉梓の隣で今は静かに眠り込んでいる赤子を優しげに見つめた。






「この子のな………」





「うん」





「名付け親になってほしいんだ」






疾風の言葉の意味がすぐには理解できず、沙霧はしばらくぽかんとしていた。




それから、驚いたように眉を上げて、






「……えっ!? わたしが名付けを!?」






と素っ頓狂な声で叫んだ