あとに残された朝日宮は、青ざめた顔で二人の後ろ姿を見送る。




その間も、混乱した頭の中では様々な考えが渦巻いていた。







(―――――奥津お兄さまは、僕を春宮に推す声があるのを知って、ご機嫌を損ねていらっしゃるのだ………)






沙霧宮に比べると、奥津宮はもとより気性の激しいところのある兄ではあったが、朝日宮に対しては基本的に穏やかであった。



あんなふうに、苛立ちを露わにして言葉をかけられたことなど、一度もなかったのだ。






(なんという冷たい瞳だったことか………)






朝日宮は思わず寒気を感じ、自分の肩から腕にかけてを何度も撫でさすった。






(………奥津お兄さまは、もしかして)






朝日宮はゆっくりと足を踏み出し、中庭の雪景色を横目に見ながら渡殿を渡る。






(僕が思っている以上に、春宮という地位へのご執着がお強いのかもしれない)