「………笑った?


…………私が?



よく分からない」







沙霧はふるふると首を横に振る。







「笑ったよ。


確かに、君は今、笑った」






「……………」







泡雪がゆっくりと瞬きをする。



沙霧はゆるりと微笑む。








「…………とっても、可愛かったよ」







「……………」








泡雪は眉根を寄せて顔を背けた。






そして、膨れたような面持ちで櫛をまじまじと眺める。




しばらくそうしていた後、不器用な手つきで髪の束に櫛を強く押し当てるようにしたので、沙霧は思わず笑ってしまった。