「………よし、こんなものかな」






沙霧は刃を入れ終わった黄楊櫛を明かりに透かし、歯が整っているかどうかを確かめる。




太さが異なる部分を微調整して、完成した櫛を泡雪に手渡した。






泡雪はゆっくりと瞬きをしながら、じいっと櫛を見つめる。





そして顔を上げて、沙霧を見た。








「ーーーありがとう。


嬉しい………必ず、大事に使う」









泡雪がそう言った瞬間、沙霧ははっと息を呑んだ。








ーーーーーまるで、雪の華がふわりと花開いたように、柔らかく。








「ーーーーー泡雪。


君、いま、笑ったね…………」








泡雪が目を細め、ゆるりと口角を上げたからだ。









沙霧が掠れた声で呟くと、泡雪はふっと表情を戻し、いつもの怪訝そうな顔になった。