「………どうした?」






沙霧の様子が変なのに気づいて、泡雪は髪を弄びながら訊ねる。





沙霧ははっと我に返り、床に転がった小刀を取り上げた。







「いや、なんでも………。


しかし、泡雪………君は、何というか、そんなつもりは無いんだろうが、だからこそ罪作りな女だなぁ…………」






「………は? 罪?」






「いや、何でもないよ。


気にしないでくれ………」







沙霧は頬が火照るのを感じながら、逸る胸の動悸を抑えようと深呼吸をした。






(………今のは、どういう意味だろう。


まるで、わたしのために髪を手入れしようと言っているように聞こえたが………。



いや、まさかな。


泡雪のことだから、なにも考えずに思ったままを言ったに違いない)







動揺を隠しきれないまま、沙霧は黙々と手だけを動かし続けた。