「疾風、ちょっといいか」





「ん?」






洞窟の中で胡座をかいて刀の手入れをしていた疾風は、入ってきた沙霧と泡雪を振り向いた。






「仕事中にすまないな。


ちょっとお願いがあるんだが………」





「おぅ、どうした」





「あのな、泡雪に櫛を作ってやりたいんだよ。


材料になるものは何かないだろうか」






「ほぅ、櫛か、いいじゃないか」







疾風はうんうんと頷きながら、手入れの道具を入れている筥(はこ)の中を探った。







「おぉ。おあつらえ向きのものがあったぞ、沙霧」





「え、なんだい」






疾風が差し出すと、沙霧と泡雪が同時に身を乗り出してきた。




仲睦まじい様子を微笑ましく思いながら、疾風が手の中のものを見せる。





それは、淡い梔子(くちなし)色をした、ちょうど掌に収まるくらいの大きさの木片だった。