しばらく経ってから、少女がゆっくりと手を下ろし、こちらへ一歩踏み出してきた。
その瞬間に、沙霧はやっと我に返った。
そして、身体が軽くなっていることに気づく。
重苦しく身の周りを圧迫していたはずの雪の重量が、まったく感じられなくなっていた。
はっとして見下ろすと、沙霧の周囲を取り囲んでいた雪が、跡形もなく溶け消えていた。
「……………え」
ぽっかりとあいた深い穴のような雪間に立ちすくんでいる自分の姿を発見し、沙霧は目を丸くして足元を見下ろす。
次の瞬間、今度は身体の芯にぼっと火がついたような感覚を覚えた。
急速に体温が上がり、訳も分からず広げた掌をじっと見つめる。
革手袋が不要に思えるほど、その手は温まっていた。
「………なぜだ。さっきまで、冷え切って、感覚もなかったのに………」
「……………」
少女は押し黙ったまま雪穴の縁に立ち、沙霧を冷ややかに見下ろした。
その瞬間に、沙霧はやっと我に返った。
そして、身体が軽くなっていることに気づく。
重苦しく身の周りを圧迫していたはずの雪の重量が、まったく感じられなくなっていた。
はっとして見下ろすと、沙霧の周囲を取り囲んでいた雪が、跡形もなく溶け消えていた。
「……………え」
ぽっかりとあいた深い穴のような雪間に立ちすくんでいる自分の姿を発見し、沙霧は目を丸くして足元を見下ろす。
次の瞬間、今度は身体の芯にぼっと火がついたような感覚を覚えた。
急速に体温が上がり、訳も分からず広げた掌をじっと見つめる。
革手袋が不要に思えるほど、その手は温まっていた。
「………なぜだ。さっきまで、冷え切って、感覚もなかったのに………」
「……………」
少女は押し黙ったまま雪穴の縁に立ち、沙霧を冷ややかに見下ろした。