沙霧は、ぽかんを口を開いた。




その口の中に、いくつもの雪のひとひらが飛び込んできたが、それに構うこともできないほど、沙霧は呆然としていた。







薄縹(うすはなだ)色に沈んだ、雪曇りの空。




とめどなく舞い落ちて、視界を白く塗りこめる細雪(ささめゆき)。




黒っぽい細枝にたっぷりと雪化粧をした樹々。







そして―――――白無垢の少女。







雪に溶けそうな純白の容姿。




燃え上がる篝火のような緋色の長髪。




雪風に乱れる千筋(ちすじ)の髪の奥、白い相貌の中にぽっかりと浮かぶ、琥珀色の瞳。








寒さも、冷たさも、痛みも、死への恐怖も。





すべてを忘れて、沙霧は恍惚とした表情を浮かべていた。