ほっとしたようににこりと笑った玉梓の顔を見つめながら、疾風が不意に顔をしかめる。






「どうしたの、疾風」





「いやぁ………複雑な気分だ」





「え? なにが?」





「………だって、なぁ?」






疾風は玉梓のすぐ傍らに身をうつし、寄り添うようにして肩を抱いた。




その背から腰にかけてを優しく撫で、疾風は呟くように言った。







「愛しい妻が、他の男のことばかり気にしているというのは、夫としては妬けるものだろ?」






「ま、やぁねぇ」






玉梓はくすぐったそうに笑って、疾風の分厚い胸元に頬を寄せる。






疾風はすり寄ってきた玉梓の頭に軽く口づけ、ふわりと包み込むように抱き締めた。








ーーーそのままゆっくりと褥に倒れこもうとした、そのとき。







「疾風!!」








場違いなほど能天気な声が、洞窟の中に大きく響いた。