沙霧は、これ以上ない、というほどに大きく目を見開いた。








「…………泡雪!!」








気持ちの昂ぶりを抑えきれずに、沙霧は泡雪に覆い被さるようにして抱きついた。








「嬉しいよ………君にお礼を言われるなんて、本当にわたしは嬉しい。



何度も君に助けてもらって、やっと君に恩返しができたような気がする」







「……………」








泡雪は呆れたような眼差しを沙霧に向けた。





見上げてくる澄んだ瞳に魅入られたように、沙霧はしばし瞬きも忘れて泡雪を見つめる。







あまりに真っ直ぐな視線に居心地が悪くなり、泡雪は目を逸らした。




身を捩り、抱きついてくる沙霧の腕の中から脱け出す。





緩慢な動作で起き上がり、そのまま洞窟の入り口へと向かおうとするので、沙霧も慌てて後を追った。







「泡雪、どこへ行くんだい」






「……………」







泡雪は何も答えずに、外へと足を踏み出した。