洞窟内が少し温まってきたので、沙霧はほぅ、と息をついた。




はっ、はっ、という浅い呼吸の音が、冷たい壁にこだましていた。





瞼を硬く閉じたままの泡雪の傍らに座り込み、沙霧はその顔をじっと見つめる。





(………さて、どうするか)






当たり前だが、沙霧は傷の手当てなどしたことがなかった。




それどころか、大量の血を流すような大きな怪我をした者を目の前で見たことさえ、一度もなかった。




せいぜい、子供の頃に、中庭で転んで膝を擦りむいた友人を見たり、桜の枝を手折ろうとして指先を傷つけてしまった時に磨り潰した薬草を塗ってもらったことがあるくらいだった。




このような矢傷など、どうすればいいのか皆目見当もつかない。





沙霧は泡雪の小さな頭にそっと手を載せて、小さく囁いた。





「………泡雪、すこし待っていてくれ。


手当ての仕方を訊いて来るよ。



すぐに、必ず戻って来るから。


つらいだろうが、少しだけ、待っていてくれ」