「ーーーーー泡雪!!」








沙霧はほとんど叫ぶように、その名を呼んだ。





白狐ーーー泡雪は、全く反応を見せなかった。




駆け寄って傍らに座り込んだ沙霧は、泡雪の顔のあたりを恐る恐る覗き込む。





繊細な白い睫毛に覆われた目はきつく閉じられ、ぴくりとも動かなかった。






その原因は、一目見ただけで知れた。





ほっそりとした身体に、二本の矢が突き刺さっていたのだ。





左肩と、左の後ろ脚の付け根に。




左の前脚にも、矢の掠ったらしい裂傷があった。





純白の毛皮は、じっとりと赤く濡れていた。






かたかたと震える手で、沙霧は泡雪の背にそっと触れる。






微かではあったが、呼吸に合わせて小さく波打っていた。





少しだけほっとして、沙霧は細く息を吐いた。






「…………泡雪、しっかりしろ!!」