柔らかく降り積もった雪の上では、思うように走れない。




そのことに焦りと、微かな苛立ちを覚えながらも、沙霧はなんとか足を前に踏み出していく。





しばらく行くと、背の高い樹が乱立するあたりに来た。








視界一面、雪の白と樹々の黒だけの世界。






その中に一つ、瞳を射るような、鮮烈な赤。








「……………血、か……?」








喉から絞り出した呟きは、ひどく掠れていた。






さぁっと血の気が引いていくのが、自分でも分かった。







くらりと身体が傾ぐのを必死で持ちこたえ、沙霧は傍らの樹の幹に手をつく。






湿ったような樹皮は、ぞっとするほどにひやりと冷たかった。