ときおり、小春日和の陽気に暖まった雪が、樹々の枝からぼとり、と落ちる音が聞こえる。






雪垂りの音が、沙霧は好きだった。





足を止め、じっと耳を澄ます。








ーーーーーー……………









(……………ん?)







沙霧の耳に、何か、聞き慣れない物音が聞こえてきた。





目を閉じて、耳に神経を集中させ、注意をそちらに向ける。











ーーーーーー………ぉん………










全身を震わせて、はっと息を呑んだ沙霧は、きらめく雪の中を駆け出した。





音の聞こえてきた方向へ、脇目もふらずに走る。










ーーーーーぉぉん………










また、聞こえた。





沙霧はさらに足を速める。






息を吸うのが苦しくなり、横腹も引き絞られたように痛くなってきた。





それでも沙霧は、少しも速度を緩めなかった。