「まぁ、お前の気持ちも分からんでもないが。



そう気に病むなよ。


いずれ疾風が何か仕事を与えてくれるさ。



とにかく、冬の白縫山はたいして仕事にならないから、ま、春を気長に待つことだ」






「そうだな………」






干し肉を食べ終えた沙霧は、ぱっと立ち上がった。




そのまま洞窟の出口へ向かう背中に、真櫂が声をかける。






「沙霧、どっか行くの?」





「あぁ、玉梓の様子を見にな」





「好きだねぇ」





「だって、新しい命が誕生するんだよ。


楽しみに決まってるじゃないか」





「はいはい、気をつけて行ってきなよ」





「そうするよ」






沙霧は氷見と真櫂に手を振り、どこかうきうきしたような足取りで出て行った。






「………ほんと、変わった奴だな」





「ま、だからこそ、あんな優男がこの荒くれ者たちの中でやっていけるんだろ」





「それもそうだ」






氷見と真櫂は頷き合いながら、塩のきいた干し肉を貪った。