「そういえば真櫂、昨日は仕事に行ったんだって?」






沙霧が訊ねると、真櫂はにやっと笑う。






「そうだよ。


へへへ、業突く張りの近江守(おうみのかみ)からたんまりお宝を頂いてきたぜ」





「ほう、近江守といえば、たしか苅部義盛どのか。


悪い噂が絶えないというのは小耳に挟んだことがあるな」





「そうそう。


あいつが国守になってから、近江の人たちは年貢に追われて食べるのもままならないってさ」





「そうかぁ。


盗んできたものは近江の民に分けてやるんだろう?」





「あぁ、春になったら、お宝を金や食いもんに替えて、持って行ってやるんだ」






「そうか、頑張れよ」






沙霧は人の好い笑みを浮かべて真櫂の肩を叩いた。