沙霧が白縫山にやって来てから、早くも一月が経った。




それでもまだまだ白縫山の春は遠い。





しかし、沙霧はずいぶんと雪山での生活に慣れて来ていた。







「…………ふぅ。


もう、雪に足をとられて転ぶことは無さそうだなぁ」





洞窟の中で保存食の干し猪肉をもぐもぐと頬張りながら独り言のように呟いた沙霧の言葉に、氷見が首を捻る。






「なんでそんなに残念そうなんだ。


いいことじゃないか」





「いや、もちろん良いんだけど。


しかし、三度目はいつになったら訪れるのか、ふと不安になって、な」






「は? 三度目?」





「いや、こっちの話だよ」






のんびりとした返事に、氷見は「はぁ……」と曖昧に答えるしかない。





隣で乾飯(かれいい)を口に運んでいた真櫂も、「変な奴」と呟いた。