考えを巡らせるような表情になった奥津宮に、兼正が満足したように笑う。






「いやはや、皇子でありながら、これほどまでに国の将来を憂えておいでとは。



………やはり、宮さまは天子の器でいらっしゃる」







奥津宮はふっと口許を歪め、兼正を見つめ返した。






「ご冗談を。


私は七の皇子ですよ、天子などとは滅相もございません」





「そんな卑下したようなことをおっしゃって。


宮さまの気概のほどは、私めは重々承知しておりますよ」





「なんとでも………」






誤魔化すように軽い口調で答える奥津宮であったが、兼正は真剣な表情になる。





「………宮さま。


私めが必ずや、あなた様を御身に合ったお立場にして差し上げます」






「……………」






奥津宮は微笑んだまま答えなかった。