兼正は満足気に頷く。






「我が女御、そして宮さまの血をお引きになる御子ですからな。



優れた御子であるのは当然のこと」






章子もそれに応えるように、御簾の向こうでくすくすと笑った。






「ほんに、ほんに、奥津はよい皇子でございますわ。


聡明で利発で、しかも齢十四にして素晴らしい御子までもうけるとは」






兼正も扇で隠した口許を綻ばせる。






「ほんにのう。


我が家門の期待と命運を御身に背負われるべくしてお生まれになった、最高の皇子であられるようだ。



十七にもなって妃も娶らずにふらふらしている、どこぞの間抜けなうつけ皇子とは雲泥の差よ」






皮肉な声音で兼正が言うと、奥津宮と章子が同時に噴き出した。






「お父さま、仮にも皇子であられる御方に対して、なんともお口のお悪いこと………ほほほ」





「まぁ、間抜けなうつけ、というのは的を射た表現ですがね」