瑞雲殿の女御・章子のもとに、父である中納言・荻原兼正が訪ねてきた。




予め、奥津宮も呼ばれていた。






「瑞雲殿の女御よ、お久しゅうございますなぁ。


ご機嫌はいかがですかな」






堂々たる体躯の兼正が御簾の前に座ると、大きな影がうつった。






「お父さま、よくいらっしゃいました」






章子はくすくすと笑いを洩らした。




兼正は今度は孫である奥津宮に向き直る。





「宮さまにおかれましては、拝見いたすたびに男振りが上がられていらっしゃる。



私めは祖父でありながら、眩しゅうて直視申し上げるのも恥ずかしいようです」






奥津宮はにやりと笑って頷いた。






「御子の新宮さまはいかがでございましょうか」






「ええ、良い子ですよ。


赤子でありながら、気品と才気を感じさせる鋭い目つきをしております」