しかし今は、とにかく自分の命を助けてもらうことが先決だ。






「…………君が来てくれて、助かったよ。


わたしは、本当に、幸運だ………。



どうか、わたしをここから引き出してくれーーー」






沙霧は顔を上げて、少女をじっと見つめた。






「………………」







少女は黙って沙霧を見つめ返す。




そのうちに少女が小さく身じろぎをしたので、沙霧は雪の中の身体を動かし、引き上げられる準備をした。







しかし。





驚いたことに、少女はくるりと踵を返してしまった。






「……………え」






沙霧は目を丸くして、少女の背中を凝視する。





少女はそのまま雪原の中へと歩き出そうとしていた。







「…………ちょ、……っと、待ってくれ。


君ーーー行ってしまうのか?」







必死な声がなんとか届いたのか、少女は足を止め、首を少しだけ沙霧の方に向けた。