「ーーー沙霧!!


どこまで行っていたんだ!?


遅かったから心配したぞ!!」






水甕を抱えて戻ってきた沙霧を見つけて、疾風が大声を上げた。




その目が、ひょこ、ひょこと引き摺られている沙霧の足に釘付けになる。






「…………怪我をしたのか!!」






疾風は蒼ざめた顔で沙霧のもとへ駆け寄った。




その慌てぶりに多少面食らいながら、沙霧はふるふると首を振る。






「いや、少し捻っただけなんだ。


たいした怪我じゃないよ」






その言葉を聞いて、疾風はほうっと息を吐き出した。






「そうか………驚いたよ。


沙霧に怪我などさせたら、世話をしてくださった康子の君に申し訳が立たないからな………」





「心配をかけてすまなかった。


水を汲むときに、ちょっとへまをしてしまってな。



でも、たとえわたしが大きな怪我をしたとしても、疾風の責任じゃないよ。


わたしが間抜けなだけだから。



そんなところまで責任を持っていたら、疾風の身が保たないよ」






ゆったりと笑った沙霧の顔を見て、「それもそうだな」と疾風は相好を崩した。