一面真っ白な雪の中に、ひときわ濃まやかな白があった。




沙霧は息を呑んで目を凝らす。





そこにいたのは。






「ーーーーー狐?」





沙霧は思わず呟いた。




唇の間から、ふわりと白い息が洩れる。






舞い踊る細雪の向こうに、純白の狐。




その姿は目を瞠るほどに優美でたおやかだった。






その瞳は、澄んだ琥珀色。







沙霧が魂を奪われたように言葉もなく見つめていると、白狐はゆっくりと歩き始めた。




ほっそりとした前脚が、一歩一歩雪を踏みしめ、沙霧に近づいてくる。






そして、ひっそりと沙霧の目の前に佇んだ。







真近に見ると、狐の純白の毛皮には、一点の染みも汚れもなかった。






降り積もった雪よりも白い、美しい狐。