沙霧は仕方なく、空を仰いだ。





桜の花弁ほどの大きさの雪が、風に舞い踊るようにして降りてくる。




その向こうには、青鈍色の曇り空。





白と青だけの世界は、こんな時でもやはり美しい。






ぼんやりと開いていた唇に、雪がしんしんと降りつのる。






冷え切った耳に届くのは、雪の上にふわりと舞い落ちる雪片と、清らかな小川の流れの音だけ。




静かだった。








ーーーどれほどの時間が経っただろうか。





沙霧はふと、気配のようなものを感じて視線を巡らせた。





その先に。






「……………あ」