実際に、沙霧は白縫山に来て十日と経たぬうちに、いつの間にか全ての盗人と仲良く会話を交わすようになっていた。




それはもちろん疾風が盗人たちにそう頼んでおいたからでもあったが、やはり、少しも威丈高なところを見せない沙霧の人柄が大きかった。




初めは『皇子』という肩書きに驚きと嫌悪感を隠せなかった男たちも、人懐っこく笑う沙霧に面と向かうと、嫌味の一つさえ言う気にもならなかったのだ。






「それも昔のままだ。


あいつは、位の高い貴族の子だけでなく、賤しい童や下男の子にまで屈託なく声をかけて、一緒に遊ぼうと誘っていたんだ。



………嫉妬や陰謀が渦巻く宮中にいても
、あいつは全く変わらなかったんだなぁ」






疾風は心から嬉しそうだった。






「本当に兄弟みたいね」






兄のように愛情深く沙霧を見守る疾風を見て、玉梓は感心したように言った。