沙霧と玉梓が赤子のことについて話し込んでいると、疾風がやって来た。





「お二人さん、こんな所で仲良く何のお話かな」





明るい声に、二人は同時に振り向いた。





「ああ、疾風。お帰りなさい」




「ただいま、玉梓。調子はどうだい」




「ええ、大丈夫よ」




「それは良かった」





鷹揚に笑った疾風は、からかうような表情で沙霧を見る。





「沙霧。まさか俺の美人な妻を横恋慕しているわけではあるまいな」






もちろん冗談なのだが、沙霧は焦って大きく手を振った。





「なっ、何を言うんだ疾風!!


横恋慕なんて滅相もない!!


わたしはただ、生まれてくる赤子のことが気になって話を聞いていただけだよ!」





疾風はぷっと噴き出して、沙霧の肩を軽く叩いた。






「分かってるよ、もちろん。


ただの冗談だ」




「そうか………それなら良いが」




「しかしなぁ、お前は本当に赤子の誕生が楽しみなんだな。


可愛い子供がお前に取られないか心配だよ、俺は」





「取ったりするものか。


でも、たまには抱かせてくれ」





「あぁ、もちろんだよ」





疾風が頷いて見せると、沙霧は満足そうに笑って手を振り、水甕を抱え直して歩き出した。