あたしじゃ、駄目なの…?

そう思うほど、胸が痛い。


けれど思い出すのは、雅人の笑顔。


雅人の馬鹿。

本当に馬鹿。

なんで…

なんで、あたしのことを好きでもないのに付き合ったりしたのよ。

好きじゃないなら、他に好きな人を作るくらいなら、ちゃんと言ってくれたら良かったのに。


もう好きじゃないって。


別れてほしいって。


そう言ってくれたら良かったのに。

そう言ってくれた方がまだ心も軽かった。傷だって浅かった。


どうしてそれすらも言ってくれないの?

そんな別れ話をすることさえ嫌になるほど、あたしのことが嫌いなの?


涙が頬を伝い、こぼれ落ちる。


怒り、なんて感情はなかった。あの女の子に対しても、雅人の馬鹿に対しても。

ただあるのは、雅人に嫌われたという悲しみだけ。


あたしは天を仰いだ。

空からは雨粒が、目からは涙が零れ落ちては、足元に冷たい水溜りをつくっていく。


あぁ、降り続く雨よ。

願わくば、洗い流してくれないか。



空気中の砂埃を。

あたしの涙を。



嫌われても、浮気されても、それでも、



雅人が好きだと叫ぶ、この恋心を。