『わ、分かったよ…で、でも、彼女さんのこと、本当に大丈夫なの?だって泊りがけなんだよ?』

『だーかーらー、大丈夫だって言ったろ?』

雅人は安心させるように、女の子の優しく頭を撫でている。


そんな景色を目で捉えつつも、あたしの頭は疑問で埋め尽くされる。


泊りがけ?

二人で?

泊りがけ?

ちょ、ちょっと待って。

それって…つまり…

浮気、よね。

浮気、してる、のね。

雅人が、浮気…


心臓はドコドコと音を立てて心拍する。けれど、決してそれは甘いものではない。

どうして…?

あたしじゃ、駄目だったの…?

あたしじゃ…


溢れそうになる涙をグッと抑える。

まだ、泣かない。雅人のために、なんて泣いてやんない。


『…雅人君は本当に好きなんだね、彼女さんのこと』

女の子の声が聞こえてハッと我に帰る。

雅人は、どう答えるの…?


『好き…?あはは、言っておくけど、俺は美玲のこと、好きじゃねーよ。だって…』


その瞬間、思考回路はフリーズした。

鼓動も呼吸も止まってしまったんじゃないかと思うほどの衝撃だった。


"俺は美玲のこと、好きじゃねーよ"?


何、それ…

あたしは気がつけば走っていた。

向かう先さえ分からないまま。