「でさ、先生が超怒ってて。お前らやる気あんのかぁぁ!って怒鳴り出してさ」


いつもと同じ真鍋の声。

そして変わらない…笑った横顔。


だけど隣を走りながらさっきのアリサちゃんの言葉を思い出すと、どんどん胸が苦しくなっていった。



付き合い始めた夏祭りの夜から真鍋は以前よりももっともっと優しくなって。

もっともっと毎日あたしを笑わせてくれて。


いつも笑ってて…いつも元気で。


だからため息をつく元気のない真鍋の姿なんて見たこともなかった。


「じゃ、お疲れ!また明日な!」


ほら…

また笑ってる。



家まであたしを送り届けてくれた真鍋はいつもの笑顔であたしに手を振りながら帰ろうとしている。



「ありがとう」

「おっ!じゃあな!バイバイ」

「うん、バイバイ…」


走り出す真鍋の自転車。



ねぇ真鍋?


今…どんな顔をしてるの?


小さくなっていくその背中に、心の中でそう聞いた。



…ごめんね。


本当は…いつも精一杯、元気に笑ってくれてるんだよね。


あたしが笑顔でいられるように、いつも笑顔で…